column casa コラム

暮らし方に直結する、建築家が今おすすめするのはどんな「水回り」?

#水回り #住宅トレンド #建築家トーク

住宅トレンド

暮らし方に直結する「水回り」は、建築家の声に耳を傾けたい

洗面台、バス、トイレなどは、毎日家族全員が使い、頻繁に掃除をする場所。使い勝手はもちろん、お手入れのしやすさも気になるところ。そんな「水回り」について、「design casa(デザインカーサ)」で活躍する建築家、内山里江さん、敷浪一哉さん、吉野伸一さんの3名にそれぞれお聞きしました。

洗面台は廊下につくるオープンなタイプが主流に(内山里江さん)

洗面台は「見せてもいいもの」に変化している

現代の新築住宅は24時間換気および高断熱・高気密の家ですので、家全体が均一に心地よい温度の空気で満たされています。そのため「廊下が寒い」といった悩みがなくなり、洗面台を設置する場所も自由度が高くなりました。

その流れでここ4〜5年は、廊下に洗面台を設置するパターンが増加。スタイリッシュな海外の洗面パーツが気軽に入手できるようになり、「見せてもいい洗面」をつくれるようになったのも理由のひとつではないでしょうか。

掃除の手間はできるだけ減らしたいから

またリクエストが多いツーボールの洗面台ですが、私はおすすめしていません。なにより掃除をする場所、汚れた排水管が2つに増えるのが大変ですもの。

みなさんホテルなどでツーボールを経験されて憧れられているようですが、全く同じタイミングで同時に顔を洗うことはそうありませんよね。ボールを2個つけるより洗面台を広くして、ひとりが顔を洗っている横で、ひとりがメイクできるように設計した方がメリットは大きいと思います。そうお伝えするとだいたいの方が「ではひとつで…」と納得されますよ。

バスルームも同じ考え方で、広くなると汚れる面積が増えてしまいます。浴槽が大きくなるとお湯の量が必要となり光熱費のランニングコストも上がります。もちろんそれでよければOKなのですが、バスルームを広くするより脱衣室や収納スペースが広い方が機能的ではありませんか?

トラブルを招かないような設備を選びたい

最後に水回りの「タッチレス」もあまりおすすめしません。私自身、経年劣化でタッチレス水栓が壊れた時、そう簡単に修理ができず、部品交換に1カ月ほどかかった経験があるからです。水回りはシンプルな設備がいちばん。もしもの時のリスクが抑えられます。

内山 里江
株式会社コモドデザイン代表

山口県出身。専門学校卒業後、住宅、店舗の建築設計・デザインを中心に従事。2005年にコモドデザイン一級建築士事務所を設立。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザインしている。

内山 里江
株式会社コモドデザイン代表

山口県出身。専門学校卒業後、住宅、店舗の建築設計・デザインを中心に従事。2005年にコモドデザイン一級建築士事務所を設立。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザインしている。

洗面台・手洗いは1カ所に集約してスタイリッシュに(敷浪一哉さん)

見える位置に設置する洗面台は、もはやインテリアのひとつ

洗面台は、帰宅後の手洗い、トイレ後の手洗い、洗面・整髪・メイクなど全ての要素をこなせる位置につくるのがおすすめです。

そして廊下に設置する洗面台は、家具だと思ってコーディネートしたいところですね。家全体のテイストと統一した洒落たデザインのものだと、見える場所に置いても逆にインテリア性を高めてくれる設備になります。ごちゃごちゃしそうだから洗面台は目立たせなくないという場合も、廊下とはいえ目線からちょっと外れる場所に設置するなどやり方はいろいろです。

予算は一点集中で、クオリティの高いものを設置したい

ちなみに一時期、玄関からあがってすぐの場所に小さな手洗いをつけるのが流行りましたが、最近は減っていますね。私も小さな手洗いはつけずに予算を1カ所に集中させて、インテリア性の高い洗面台をつくった方がいい家になると考えています。

この考え方は家づくりの様々な要素に応用できます。予算はどうしても限りがあるものです。すべてに100%を求めるのではなく、メリハリをつけていきましょう。

敷浪 一哉
シキナミカズヤ建築研究所

北海道出身。1998年、東海大学工学部建築学科卒業後、YOURSPROJECTに勤務。2004年から㈲シキナミカズヤ建築研究所を設立。「主夫建築家」を目指し、家事と子育てに取り組みつつ住宅設計の糧にしている。

敷浪 一哉
シキナミカズヤ建築研究所

北海道出身。1998年、東海大学工学部建築学科卒業後、YOURSPROJECTに勤務。2004年から㈲シキナミカズヤ建築研究所を設立。「主夫建築家」を目指し、家事と子育てに取り組みつつ住宅設計の糧にしている。

帰宅後すぐバスルームへ行ける動線も人気です(吉野伸一さん)

家族も来客も、いつでも使える洗面台をつくる

私の場合も洗面台を脱衣室につくるのではなく、外に出してオープンにする設計が多いですね。このパターンが主流になったのは、誰かがお風呂に入っている時に、洗面台を使えない時間が発生するのを解決するためです。また、来客の方が手を洗いたいとなった時、気軽に洗面台を使っていただくこともできます。

これにともない脱衣室をランドリールームと兼ねるパターンも増えています。脱衣してそのまま洗濯、干すのも脱衣室の中で行い、乾いたタオルや下着は脱衣室内のチェストへ収納する。隣接してファミリークローゼットをつくる方もいます。その時は脱衣室に除湿機を置くスペースを取りましょうねとアドバイスさせていただきます。しっかり換気されているとはいえ、除湿機があると洗濯物の乾きが早くなりますよ。

住まう人の生活スタイルに合わせて、水回りの設計を考える

その他に水回りでいえば、玄関から直接、バスルームに行ける設計が人気です。外から持ち帰ったヨゴレをリビングに持ち込まない動線ですね。特に部活動をしているお子さんや仕事の関係などで帰宅後すぐに入浴したいご家族がいる場合に喜ばれています。

水回り以外でも、早朝に出勤するご家族の寝室を玄関近くに作る、起床時間にズレがあるご夫婦なら寝室の外にウォークインクローゼットを作るなど、暮らしに合わせて家族の動線を工夫できます。

吉野 伸一
スタジオキチ合同会社

大分県日田市出身。日本大学工学部卒業。高校時代にフランク・ロイド・ライトに出会い、建築家を志す。日本大学工学部卒業後、複数の工務店に勤務し、2018年「スタジオキチ合同会社」を設立。現在に至る。

吉野 伸一
スタジオキチ合同会社

大分県日田市出身。日本大学工学部卒業。高校時代にフランク・ロイド・ライトに出会い、建築家を志す。日本大学工学部卒業後、複数の工務店に勤務し、2018年「スタジオキチ合同会社」を設立。現在に至る。

建築家とつくる、注文住宅の新提案