column casa コラム

建築家が教えたい、後悔しない「窓」のつくり方

#窓 #住宅トレンド #建築家トーク

住宅トレンド

知っているようで知らない「窓」について、「デザインカーサ」の建築家に聞く

大切な家のパーツでありながら、そのよしあしを語れる人はそういない「窓」。設備としてのメリット・デメリットから、窓からはじまる暮らしの雰囲気づくりまで、「design casa(デザインカーサ)」で活躍する建築家、内山里江さん、敷浪一哉さん、吉野伸一さんの3名にそれぞれお聞きしました。

窓は「電気代」と「掃除の手間」に大きな影響を与える(内山里江さん)

窓は、家の中の熱を最も奪ってしまう存在

「窓がいっぱいの明るい家を建てたい」というリクエストをよくいただきます。でも実は窓って、壁の5倍くらい室内の熱(温かさ・涼しさ)を奪ってしまうんです。ですから単純に考えて、窓をたくさん設置すると電気代が高い家になってしまいます。高気密・高断熱を頑張っても窓がその効果をそいでしまう。そんなことが起こらないようにしたいですね。

デザインだけでなく、維持管理できる窓を選択したい

また、窓を大きくとると汚れがかなり目立ちます。ですからきちんと掃除ができる窓設計をすることも大切。私の場合、飾り窓なども高圧洗浄機で水をかけられる場所に設置しつつ、デザインと両立するようにしています。そうすると窓掃除のために高いハシゴに登って、危険な目に合う必要もありません。軒を出せばよいという説もありますが、軒ってクモの巣がかかりやすいので要注意なのですよ。

家づくりのひとつの考え方として、窓はもちろん家全体を「自分たちで維持管理がしやすい家」とするのはいかがでしょうか。家族みんなで家のお手入れをすれば、ていねいな暮らしにもつながるし、家への愛着もさらに増していきますよ。

内山 里江
株式会社コモドデザイン代表

山口県出身。専門学校卒業後、住宅、店舗の建築設計・デザインを中心に従事。2005年にコモドデザイン一級建築士事務所を設立。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザインしている。

内山 里江
株式会社コモドデザイン代表

山口県出身。専門学校卒業後、住宅、店舗の建築設計・デザインを中心に従事。2005年にコモドデザイン一級建築士事務所を設立。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザインしている。

「景色を見る」ための窓は「方角の選び方」がポイント(敷浪一哉さん)

周囲の環境を、絵画のように眺める窓をつくろう

近年は「景色を見る」ことを意識した窓のリクエストが増えたように感じます。特にここ最近、郊外にゆったりと暮らすための家を建てたいというお客様が多いからでしょうか。

たとえば、農業が盛んなエリアに新築した家があるのですが、リビングの床から数段上がったステージ状のスペースに田んぼと面した窓を設置しました。若干高い位置にある窓なので、リビングのソファでくつろいでいる時に見えるのは空だけ。農作業中の方と目線が合うことはありません。時々、田んぼの景色を眺めたくなったら段上へ。ステージのようなスペースでのんびり過ごすこともできます

日当たりだけじゃない、窓と方角の絶妙な関係性

また一般的にはあまり知られていませんが、南側の窓は眺望に対して逆光になるので、窓の外の景色の色が飛んでしまいます。眺望を楽しむなら、朝美しく見えるのは西側の窓、昼間は北側の窓、夕方は東側の窓がいいでしょう。景色自体に太陽の光が当たることを意識するとよいですね。

逆に日当たりをよくしたいなら、朝は東側の窓、昼は南側の窓、夕方は西側の窓となります。ただ暑さや紫外線も気になります。結局カーテンが閉めっぱなしになると窓の意味がないので、特におすすめはしていません。

ちなみに窓には大きく分けて3つの性格があります。「日を当てる」「景色を見る」「風を通す」です。これを基本に家中の窓へ役割を与えれば、窓の設置場所や大きさ、窓枠の仕様は必然的に決まっていくものです。ただ新築の家となりますと24時間換気が完備されています。これにより「風を通す」の重要性が少々下がっているのが最近の傾向ですね。

敷浪 一哉
シキナミカズヤ建築研究所

北海道出身。1998年、東海大学工学部建築学科卒業後、YOURSPROJECTに勤務。2004年から㈲シキナミカズヤ建築研究所を設立。「主夫建築家」を目指し、家事と子育てに取り組みつつ住宅設計の糧にしている。

敷浪 一哉
シキナミカズヤ建築研究所

北海道出身。1998年、東海大学工学部建築学科卒業後、YOURSPROJECTに勤務。2004年から㈲シキナミカズヤ建築研究所を設立。「主夫建築家」を目指し、家事と子育てに取り組みつつ住宅設計の糧にしている。

なぜそこに窓があるのか?を考える(吉野伸一さん)

「外とのつながり」「光」「防犯性UP」など窓の存在意義は幅広い

私は家のウチとソトのつながりを大切にしているので、外環境を遮断するような小さな窓ばかりの住宅デザインを提唱してはいません。ただ、住宅密集地で外からの目線を遮りたい、防犯面が気になるなどの理由から、極力窓を減らした住宅が必要とされる場合もありますね。

私が窓について考える時、基本としているのは「なぜそこに窓があるのか?」の理由です。たとえば大きな窓ならば「庭やテラスなど、外とのつながりをつくりたい」「光をしっかり入れたい」といった存在理由があります。

小さな窓も同様です。通路の突き当りやトイレに設けた窓が、光をいれるためなのか、外の空気を取り込むためなのか、よい景色を切り取るためなのか。もしくは本当は必要ない窓なのではないか。住まう家族の暮らしぶりや周辺環境など、様々な条件を考慮しながら窓設計を行っています。そうすることで魅力的な窓を設置でき、窓が暮らしに癒やしやうるおいを与えてくれる存在になるでしょう。

設計図から想像しにくい窓は、ぜひ建築家の意見を参考に

以前、担当したお客様のSNSで「小さな窓をつけてくれて、そこから陽の光がきれいに入る時間がうれしくて」といった嬉しいコメントをいただけたことがあります。西側の窓で西日しか入らないのですが、お客様の暮らしぶりに合わせてあえて窓をつけました。

窓って暮らし始めてからその良さを実感できるパーツです。ぜひプロの意見を参考にしてほしいですね。

吉野 伸一
スタジオキチ合同会社

大分県日田市出身。日本大学工学部卒業。高校時代にフランク・ロイド・ライトに出会い、建築家を志す。日本大学工学部卒業後、複数の工務店に勤務し、2018年「スタジオキチ合同会社」を設立。現在に至る。

吉野 伸一
スタジオキチ合同会社

大分県日田市出身。日本大学工学部卒業。高校時代にフランク・ロイド・ライトに出会い、建築家を志す。日本大学工学部卒業後、複数の工務店に勤務し、2018年「スタジオキチ合同会社」を設立。現在に至る。

建築家とつくる、注文住宅の新提案